日曜日のこと。電車に乗って母の介護に出かけようと駅に向かった。駅に着くとどうやら電車が又、遅れていた。強風で電車が遅れている路線もあったが、ある踏み切りの遮断機棒が折れていたらしく安全点検の為、電車が遅れていたようだ。
その影響であろうか電車の中はいつもより混んでいた。私は仕方なく入口近くの補助席で座ることにした。
しばらくすると杖をついたお婆さんが乗って来られた。私が席を譲ろうとしたら、隣の人が先に「次の駅で降りるのでどうぞ」と席を譲られた。
そのお婆さんは席を譲ってもらった人と世間話をしておられた。
そして、次の駅に着くとお婆さんは丁寧に「有難う御座いました」と席を譲った人に挨拶を交わされていた。
お婆さんは、中の席が空いたので「補助席は怖いので向こうの席に行きますわ」と言って席を立たれた。
ところがそのお婆さんは戻って来られた。
四人がけの席。窓ぎわの席が空いているが手前に男性が二人。
お婆さんが座ろうと思って側に行っても二人とも窓際に移ろうともせず、中に入ろうとも男性の長い足で入れず戻って来られたようだ。
お婆さんは「ちょっと移ろうとするのがエチケットなのにね」と話されていた。
仕方なく補助席に戻られたそのお婆さん。
家で一人で居ても詰まらないので遊びに行くそうだ。行くときは元気だが、帰りはしんどくなってタクシーで帰る時もあるけれど、遊びに出かけるのが楽しみで一人で電車に乗るようだ。
とても陽気で元気なお婆さん。私は「失礼ですがお幾つですか」と訊ねてみた。
するとお婆さんはニコニコしながら「何歳か当ててみなさい。誰も私の歳を当てた人はいない」と言うのだ。
私は「七十五歳ぐらいですか」かと答えたら、又、ニコニコ顔。
「だいたい十歳は若く見られます。これでも九十歳ですね」と話された。
杖をつかれているが、腰が曲がっているでもなく、元気に喋られるお婆さん。誰がみても九十歳に見えないのである。
そしてお婆さんから「若い間に色々出かけなあきませんよ」と忠告までされてしまいました。
ほんの短いひとときでしたが、長い人生の経験の中から、元気の源を教えてもらったような気がします。